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農業汚染という環境問題

環境問題という言葉が使われるようになったのはいつ頃でしょうか。

古くは18世紀、石炭を使用するようになった産業革命の時代から、19世紀の公害問題(大気汚染、水質汚染、土壌汚染)、そして20世紀の人口増加に伴う森林伐採や砂漠化、地球温暖化、ごみ問題、エネルギー資源の枯渇、海洋資源の枯渇、放射性物質の廃棄等々……人類の発展の歴史は環境問題の歴史でもあるといえます。

 

それら環境問題の中には「農業汚染」という概念も含まれています。

たとえば農薬や肥料による土壌汚染や水質汚染、さらには機械使用による温室効果ガスの発生等、私たちが食料を得るための行為もまた、現代では環境汚染の原因となっているのです。

今回は「化学的に合成された農薬(以下、このページでは農薬と表記)」が、環境に対してどのような影響を与えるのかについてみていきましょう。

 

化学農薬が環境にもたらす

デメリット~生物多様性への影響

 

化学農薬が主流となったのは、第二次世界大戦後。農業の近代化に伴い、生産性を上げる手段として農薬は大変有効なものでした。

しかしその普及に伴い……

●農業をする人の健康被害(皮膚や内臓の病気)

●それを食べる人の健康被害(化学物質過敏症)

●田んぼや畑等の周辺生物への影響(ホタルやメダカがいなくなる、コウノトリが絶滅する)

等々が問題視され、農薬(および肥料)に頼らない栽培方法(=オーガニック・有機栽培)が模索されるようになりました。

 

もちろん、生物多様性が失われるのは農薬だけが原因ではありません。しかし間違った使い方をすれば危険であることは紛れもない事実です。そこで2002年、農薬取締法の改正によって、生き物や生活環境への悪影響を防ぐための使い方が明記されるようになりました。

ところが昨年末、こういった報道がなされていたのを覚えていらっしゃるでしょうか。

●残留農薬が基準値を大幅に超える野菜:

 

福岡県の「JAくるめ」が出荷した春菊の一部から、

基準値の180倍の農薬が検出(けいれんの恐れがあると警告)されました。

原因は、一軒の農家が玉ねぎ用の農薬を春菊に使用したこととされています。

ー2020年12月8日

●無農薬と書いていたが農薬が使われていた:

グリーンコープ生活協同組合連合会の発表によると無農薬として販売した野菜に、農薬を使った野菜が混入していた可能性を指摘。ー2020年12月7日

 

人間のすることに完璧はありませんから、「もう二度とこんなことは起こらないだろう」と楽観視はできるものではないといえます。

 

また、比較的新しい「ネオニコチノイド」という農薬は、ミツバチの大量死を引き起こすということで、使用禁止の動きが世界で広まっていますが、日本では緩和の動きにあります。

 

 

化学農薬とは何か

~私たちの暮らしにも身近な存在

農薬は病害虫や雑草から農産物を守るために使用されます。ですから「農業をする人だけが農薬を使う」というイメージをもたれやすいのですが、たとえばガーデニングなどの家庭用園芸にも使われますし、ゴルフ場や芝生、街路樹、マンションの植栽に使うケースもあります。

殺虫剤、殺菌剤、除草剤、殺鼠剤(さっそざい・ネズミ用※1)など様々な種類があり、それらはホームセンターで買うこともできます(農林水産省の公式サイトより)。

また、家庭用の殺虫剤も農薬と同じ成分を含んでいるものがあります(ただしこれらは厚生労働省の管轄であり、人体への影響を考慮しその処方が異なります)。

農薬は大変便利なものではあると同時に、その使い方や未来への影響については、大変慎重になるべきものだといえるでしょう。生産者の方をはじめ、それを流通させる業者や販売する人に至るまで、一連の流れの中で適正な取り扱いが求められます(※2)。

 

 

「オーガニックや自然栽培を選ぶ」ことの意味

オーガニックや自然栽培とは化学物質による健康リスクを避けるという選択肢の一つであり、サスティナビリティ(持続可能)な暮らしを送るという選択肢のひとつでもあるります。

もう少し具体的にイメージをするのであれば、「健康的な人生を送りたい」という思いをかなえるための手段ではないでしょうか。

※1:家庭で使う場合は医薬部外品

※2:GAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)をご存じでしょうか。GAPは農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組です。

※参照:有機JAS講習会テキスト/特定非営利法人有機農業認証協会

※参照:有機農産物検査認証制度ハンドブック(改定第五版)/農林水産省消費・安全局表示・企画課

※有機JAS検査員資格保持者の監修の下、記事を作成しております

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